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1、第十章瀉下薬【定義】腹瀉あるいは滑利大腸を引き起こし、排便を促進する薬物を瀉下薬という。【効能】瀉下薬は大便を通利し、積滞・水飲・その他の有害物質を排除することができる。また泄熱、活血、解毒などの効能を持つものもある。【適応症】大便秘結、腸道積滞、実熱内結、および水腫停飲などの裏実証に使用される。一部の攻下薬は清熱瀉火の作用を持ち、外感熱病によって引き起こされた高熱神昏や譫語発狂、あるいは火熱上炎によって引き起こされた頭痛、目赤、咽痛、歯肉の腫痛、吐血、衄血などにも使用される。便秘の有無に関わらず、いずれも苦寒泄降の作用で導熱下行・清除邪熱をはかること
2、で、「釜底抽薪」の効果を発揮させる。「六腑は通をもって用となす」「通じれば則ち痛まず」の原則により、攻下薬を主として適当な清熱解毒薬や活血化瘀薬を配伍し、各種の急性腹症の治療に使用すれば、よい効果を上げることができる。【分類】攻下薬潤下薬峻下逐水薬三種類に分類される。中でも攻下薬と峻下逐水薬の瀉下作用は強く、峻下逐水薬の作用は特に激しい。潤下薬は腸道を潤滑し、作用は緩和である。【使用注意】1.裏実証で表邪を伴っている者にはまず解表をはかり、後に攻裏をはかる。必要によっては攻下薬と解表薬を同時に使用して表裏双解をはかり、表邪の陥裏を避けるようにする。2.
3、裏実正虚の者には補益薬を同時に使用して攻補兼施をはかり、攻下による正気の損傷を防ぐようにする。3.瀉下作用の激しい薬物は正気を損傷し易いため、久病体弱、出産前後、月経期には慎重に使用するか禁忌とする。4.瀉下薬は胃気を損傷し易いため、効果があったらすぐに服薬を中止し、服用しすぎのないようにする。第1節攻下薬1、大黄 だいおう【性味】苦、寒。【帰経】脾、胃、大腸、肝、心。【効能】1.瀉下通便。2.清熱、瀉火、解毒。3.活血祛瘀。4.涼血止血。5.清泄湿熱。6.消炎、抑菌、抑インフルエンザウィルス。7.利胆、健胃。8.血圧低下、血清コレステリン低下。【応用
4、】1.大便秘結:陽明腑実証の熱結便秘を主治するが、配伍によって各種の便秘に使用することができる。2.上焦熱証:火邪上炎によって引き起こされた目赤腫痛、歯肉の腫痛出血、鼻衄、吐血、上部消化管出血などすべてに適している。3.熱毒瘡瘍、火傷、打撲外傷などに対して内服や外用で使用する。4.急性虫垂炎、急性腸閉塞。5.急性胆嚢炎や急性黄疸型肝炎で便秘を伴っている者。6.女性の下焦瘀血証:閉経、悪露不下、産後瘀滞、瘀血腹痛、骨盤内の腫瘤、人工中絶後の出血。7.血小板減少症。8.泌尿器系感染症:尿意の切迫、頻尿、排尿痛で下焦湿熱に属している者。【用量】3~12g。外
5、用には適量を使用する。【禁忌】妊婦、月経期、哺乳期には慎重に使用するか禁忌とする。体が虚していたり寒証の者に対しては配伍して使用する。【配伍】1.芒硝を加える:便秘や高熱など陽明腑実熱証。多量に配伍して腸閉塞に使用することができる。2.附子を加える:便秘、腹中絞痛、畏寒などの冷秘。3.火麻仁・当帰を加える:血虚便秘。4.黄連・黄芩を加える:上焦熱証、および心下痞満。5.茵蔯蒿を加える:湿熱黄疸。6.牡丹皮を加える:急性虫垂炎。7.シャ虫・桃仁を加える:下焦瘀血による閉経、子宮筋腫。8.地楡を加える:火傷に外用する。9.白芷を加える:熱毒瘡瘍。10.花生
6、紅衣を加える:血小板減少症。11.木通・車前子を加える:湿熱淋証。12.厚朴・枳実を加える:脘腹脹満。13.人参を加える:気虚便秘。14.木香を加える:痢疾。15.肉桂を加える:吐血、衄血、および胃脘痛。16.升麻を加える:胃火による歯痛。【説明】大黄は清熱瀉下の主要薬物である。気味は重濁で、直行下降し、走而不守であり、古人は「将軍」と称していた。これは本品が肛竅を開通し、邪を外に出すことを喩えた言葉である。大黄は涼血活血の効能も持つ。本品は気分薬であるだけではなく、血分薬でもあり、配伍を変えることによって応用範囲は極めて広いものとなる。ただし大黄の性
7、は寒涼で陽気を損傷しやすいため、単独で虚証や寒証に使用してはならない。大黄は炮制や煎方の違いによって作用もまた異なってくる。生大黄の瀉下力は強いので、攻下したいときは生で使用する。湯剤に入れる場合は後下して少し煎じるか、あるいは粉末を冲服すれば瀉下作用は一層強い。長時間煎じると瀉下力は減弱する。酒制大黄の瀉下力は弱いが活血作用が良好になるので、瘀血証に適している。大黄を炒したものは、出血証の治療によく使用されている。本品は将軍、川軍(せんぐん)、熟軍、錦紋(きんもん)などとも呼ばれる。近代研究によって大黄の優れた抑菌・抗ウィルス・抗炎・止血などの作用が
8、表明されているため、各種の急性炎症や発熱で、腹脹や便秘を兼ねている者に広く使用することができる
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