初修外国語としてのスペイン語教育の意義と展望

初修外国語としてのスペイン語教育の意義と展望

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1、初修外国語としてのスペイン語教育の意義と展望報告初修外国語としてのスペイン語教育の意義と展望横 山 友 里要 旨本稿は、異文化間コミュニケーションやマルチコンピテンスという異文化理解教育の観点から大学における初修外国語としてのスペイン語教育の実態と意義を考察、将来への展望を目的としている。分析対象としたのは、①各大学のスペイン語教育目標、②使用教科書、③スペイン語学習理由である。その結果、「外国語教育」よりも「外国語学習」に力点が置かれ、母語話者を正解として知識のみが教えられる傾向、異文化理解教育も知識として文化を教えるのみであること、異文化理解に意義の力点が

2、置かれるが、実際には文法重視の教育であるというねじれが明らかになった。今後の展望として、1)スペイン語自身が持つ多様性と、スペイン語を学ぶ行為そのものが持つ多様性という利点を活かし、異文化理解を自分の中に取り組むこと、2)自律した学習者として、異なる文化と出会う中で自分の文化を問い直し、柔軟かつ客観的な視点を持ってコミュニケーションすることの重要性が示唆された。キーワードスペイン語教育、異文化間コミュニケーション、マルチコンピテンス、自律学習1 はじめに外国語を学習する、それは私たちの生活の中で、もはや珍しいことでもなく日常的に行われていることだといえるだろう

3、。しかし、日本の大学において初修外国語としてスペイン語を履修することは当たり前のこととしては認識されていない。2013年度の文部科学省による「大学にお1)ける教育内容等の改革状況について」調査では、「カリキュラムの多様性:外国語」の項で、スペイン語を設置している大学数は国立43大学、公立25大学、私立162大学であり、調査対象となった国公私立738大学のうち31.2%である。また、Ugarte(2012)によると、2012年の時点でスペイン語・スペイン語圏文化などを主専攻とする学部・学科を持つ大学の数は17大学、初修外国語科目(一般教養科目)としてスペイ-18

4、3-立命館高等教育研究17号2)ン語を開講している大学は240大学である。文部科学省の2012年のデータでは、日本における総大学数は783大学で、Ugarteのデータと比較するとスペイン語・スペイン語圏文化などを主専攻とする学部・学科を持つ大学は全体の約2%、初修外国語科目として開講しているのは全体の約30%であり、これらの数字からもスペイン語学習・スペイン語教育というものが、大学教育において多数派を占めているとは言い難い。外国語教育において一番の主流である英語教育の意義は、国際語であること、また将来のためなど、あらためて意義を問う必要がないほど明らかである。

5、鳥飼(2014:110)では政府の考える「グローバル人材育成」とはスペイン語でも、他の諸外国語でもなく、英語能力・英語コミュニケーション能力や育成や英米理解であることが述べられている。主流ではないスペイン語教育においては、なぜスペイン語を教えるのかという意義は未だ明確でない。バイラム(2015:4-5)では、外国語を教える教師とは、教える言語がどのように新しい観点・視点を与えることができるか、学習者のアイデンティティである母語への疑問や今まで当たり前と思ってきた自分たちの文化とは異なる見方をどのように教えるかということを考えなければならないとしている。本稿では

6、なぜスペイン語を教えるのか、スペイン語を学習する意義は何かという問いに答えるため、日本のスペイン語教育において大半を占める初修外国語としてのスペイン語教育に焦点をあて、異文化間コミュニケーションや多様性、自律学習やマルチコンピテンスの視点からその意義と展望を明らかにしたい。2 大学における初修外国語教育の意義外国語教育の意義というものは、時代の変遷によって常に変化してきた。また、大学における外国語教育を取り巻く一般教育、教養教育の制度も時代とともに変化してきた。2002年の中央教育審議会答申「新しい時代における教養教育の在り方について」の中の「我3)が国の大学

7、における教養教育について」によると、日本における教養教育は、戦後アメリカの大学のリベラルアーツを基にして、一般教育として導入された。当初の理念は、様々な分野にわたる教養と幅広い見識を身につけることであった。しかし、この答申の資料によると、①それぞれの大学において、条件や整備が伴わず実際の授業がこれらの理念からかけ離れたものになってしまっていたこと、②実際に一般教育を担当する教師側にその理念が伝わっておらず、また専門教育との連携も十分にとれていなかったため、学生、教師両方にとって一般教育の意義や目的などが不明瞭であったこと、③授業科目の区分や履修する単位などが固

8、定化されていたため、大学の多様化に対応

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