日中サービス価格調査と新たな購買力平価の試算

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1、日中サービス価格調査と新たな購買力平価の試算慶應義塾大学　木地孝之大阪経済大学　泉　弘志埼玉大学　　　李　　潔19[要旨]今回、慶應義塾大学が開発した東アジア諸国のエネルギー消費・大気汚染分析用産業連関表、EDEN（EconomicDevelopmentandEnvironmentNavigation）により、1990年におけるアジア各国の付加価値額（ほぼＧＤＰと一致）１単位あたりエネルギー消費量を比較すると、付加価値額を市場レートでUSドルに換算した場合、日本を1.00として韓国2.3倍、台湾1.9倍、インドネシア3.6

2、倍、中国12.4倍となり、中国が飛びぬけて高くなる。しかし、世界銀行が公表しているＧＤＰ統計から購買力平価指数を計算し、付加価値額を実質化して比較すると、韓国1.7倍、台湾1.5倍、インドネシア1.1倍、中国2.8倍となり、それ程極端な差異は生じない。常識的に考えて、農業、しかも露地栽培のウエイトが高い中国が、付加価値１単位あたり日本の12.4倍のエネルギーを消費しているとは考えられないから、市場レートでUSドルに換算した場合の12.4倍は、明らかに過大評価であり、おそらく、購買力平価で実質化した場合の2.8倍が実態に近い

3、ものと考えられる。このように、国際間の比較を行う場合、価格評価の方法が重要問題であり、特に、中国のように市場経済化が不十分な国について、市場レートでUSドルに換算したのでは、到底、実態を正しく把握することが出来ない。そこで、購買力平価の算定が必要になるが、上記、世界銀行のＧＤＰ統計から計算される購買力平価は、国単位のマクロの購買力平価であり、多数の部門を持つ産業連関表に直ちに適用することは出来ない。複数国の産業連関表を実質化するためには、各国産業連関表の部門ごとに計算された購買力平価が必要である。これまで、いくつかの機関・

4、研究者により、部門別購買力平価の試算が試みられてきたが、いずれも、①質の相違をどのように数値化し反映させるか、②サービス業の単価をどのようにして把握するかという、２つの問題がクリアーされていなかった。今回、我々は、日中の専門家および学生による価格実態調査と、両国３都市（東京、大阪、盛岡と北京、上海、長春）の小売物価統計調査を活用することによって、日中両国のサービス業の単価比較を試みた。その結果、まだ研究は途中段階であるが、これまでの日中間購買力平価の研究を一歩前進させることが出来た。　　本稿は、今回研究の中間報告として、日

5、中の小売物価統計調査の内容と比較可能性、今回行った日中サービス価格調査の方法と結果、それらを利用した新たな日中購買力平価の試算について、可能な限りバックデータ等を含めて紹介したものである。19目次１　中国人民元購買力平価推計に関する先行研究について（泉　弘志*１）･････　1⑴　ＧＮPないしGDPの実質化を目的とした購買力平価の推計⑵　産業別購買力平価の推計と産業連関表の実質化２　日中小売価格の実態調査（木地孝之*２）･･･････････････････････････････　8⑴　問題の所在⑵　日中3都市の小売物価

6、比較⑶　日中両国の価格実態調査３　新たな日中購買力平価の試算（李　潔*3）･･････････････････････････････　11⑴　調査結果の利用⑵　均衡価格モデルによる推計　(3)　試算結果　[参考文献]＜付表＞　1-1　日本の小売物価調査と中国･････････････････････････････････････････17　1-2　中国の小売物価調査と日本･････････････････････････････････････････402-1　日中価格実態調査（サービス部門）･･･････････

7、･･････････････････････54　2-2　日中価格実態調査（財部門）･･･････････････････････････････････････623-1　1995年日中物的部門購買力平価推計表･･････････････････････････････653-21995年サービス部門購買力平価推計表･･････････････････････････････70　*1　大阪経済大学経済学部教授*2　慶應義塾大学商学部助教授*3　埼玉大学経済学部助教授19１　中国人民元購買力平価推計に関する先行研究につい

8、て　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中国人民元の購買力平価に関しては1950年代から最近にいたるまでかなり多くの人によって推計が試みられてきた。末尾に参考文献として年代順に並べたリストを載せておくので参照してほしい。それらのうち我々が最も重要と考える推計についてその