足球风云日文同人文ツヴァイ外伝kouhaku-ii

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1、ツヴァイ外伝～KOUHAKU-Ⅱ～「何で、あんたみたいなのがキャプテンなの？」「文句があるなら、クラブチームにでも行けば？」毎度お馴染みの口喧嘩を無視して、赤堀はランニングの終了の笛を鳴らした。「なんとかならんのか？」「無理だよ」あっさり赤堀は答えて、大塚を促す。件のふたりは全速力でゴールしたせいで、地面に転がっていた。「あれだけ大声で言い争いながら全力で走ってんだもん。ばてないのが不思議だわん」クールダウンのはずなのだが。「馬鹿は放っておいて、後片付けに入るぞー」服部の言葉に後輩たちも動き出す。「馬

2、堀が入部してから、毎日あんな調子で。大丈夫かな？」「放っておけよ。…その馬堀がいるから久保も部に顔を出してるんだろうし」本人曰く、部長としての責任とやら。「それにしても、馬堀も凄いよな」「うんうん！　久保さんに完全についていけるんだもん」後輩がボールを集めながら話していた。「けっ！」乱暴に籠にボールを叩き込んだのは、白石だった。「健二？」「なんで…。いや、何でもねぇよ」言葉に出さないが、それ故に察した平松がわずかに顔を伏せる。「馬堀は、どうして久保さんに突っかかるのかな？」「…さあ」田仲に訊かれた新田

3、が首を傾げていた。──もどかしい。のだろう。誰の何がなどと質す必要もなく、それは久保で、その姿勢で、そのテイタラク。でも、その理由もわかっていて、症状は軽いながらも同じ病を抱える身では、手を差し伸べる余裕はなく。「当分は好きにさせておくさ」誰に言うともない呟きが、先輩の一人からもれたのだった。馬堀圭吾。夏の終わりに遠くブラジルから日本は静岡へやってきた帰国子女。理由はいろいろあろうが、新設であまり偏差値も高くなく帰国子女に対する門戸などある程度学力等が合致した掛川高校へ編入した。本年度16歳となる高校

4、生であるので。異国の地で育んだものはいろいろあるが、特筆すべきはサッカーであろう。本場というべきブラジルを肌身で感じ会得してきた、その技術のみならず姿勢は、華やかなサッカーを体現せしめる。その馬堀が日本でのサッカーをする場として選んだのは、より早く世界を捉えられる可能性があるだろうプロチームのユースといったクラブチームではなく高校の部活動だった。これにもいろいろ理由があったが、一番の理由は、面白そうな人物がいたから。馬堀をして無茶苦茶上手なくせに、ひどくサッカーを、憎んですらいる。その憎しみの訳はどう

5、でもよかったが、それなのに神様に愛されているとしか思えないサッカーをする彼を、知りたいと思ったから。久保嘉晴。掛川高校サッカー部の創立者にして現主将。天才とはこういうものだとばかりの才能に恵まれた、将来を嘱望された高校生。「そのくせ、すぐに逃げるんだからな」「なんか言ったか？　馬堀」「いーえっ！」部活後の部室で密集して着替える男子高校生の群れ。「わめいてないで早く着替えろよ」「わかってるよっ」同級生に急かされている主将を横目にさっさと着替えた馬堀は部室の外へ出る。「んーっ。外はこんなに広いのになぁ」伸

6、びをしているその脇腹を、誰かが突いてきた。「あひゃあ！」「うひゃひゃひゃっ」犯人は佐々木だった。変な笑いと新田に指摘されている。馬堀は脇を固めて防御姿勢で佐々木を睨んだ。「あにすんのよっ」「無防備なとこをせめるのは愉しい」「つまり、意味はないってことだねん？」肯定に大きく上下に振られる頭を下になったタイミングで押さえつける。「まぼちゃ～んっ」「やられたらやり返せっ！」そのまま頭を押さえ込み、隣りの新田に合図する。頷いた佐々木の相棒は、思いっきり両脇をくすぐりはじめた。「目には目と歯を？」「やられたら倍

7、返し」見物人が感想をこぼしながら通り過ぎていく。「た～すけて～」佐々木が振り払えないでいた馬堀の腕を取り上げたのは、主将だった。「遊んでいるのなら、自主練でもする？」「いえっ！　オウチへ帰りますわ、キャプテン様」するりとかわして、身を翻す。「そういえば…、キャプテンって夏休み前は後練なさってたそうですね？」場が凍りついた。お互いの腹を読ませない微笑が、それをさらに増長し、その場から逃げようとする連中の動きが面白くなっていた。笑える人間はおろか見ている者もいなかったが。久保は口の中だけで何かを答えたよう

8、だが、誰にも聞き取れはしなかった。「…いいです」瞳に見えたもののあまりの暗さに馬堀は追求はしないことにした。何事もなかったように帰路に赴く。「…馬堀が付き合ってくれるなら、また始めようと思っているけど？」──げ。──何言い出す？！逸れていた視線が集まって、一転注目の的となった久保は斜めに馬堀を見ている。「ご一緒しましょ」次の機会からは。「あれ、マジだったんだ…」目を剥いているのはそう呟いた矢野だけではなかった。「久保も足掻いているんだよ」赤堀は静かに応え