足球风云日文同人文ツヴァイ外伝prologue

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1、ツヴァイ外伝～PROLOGUE～神谷がロッカーを出て行く。乱暴に開閉されたドアが耳障りな悲鳴をあげる。同時に、控え室に残っていた面々も飛び上がった。「イラついてやがんな。」呟いた大塚も、そして次々と競技場へ向かう。やがて、部屋には着替えがトロイと評判の主将と何かとタイミングの良いのか悪いのかバッチリな田仲のふたりが残っていた。「な…なんだぁ。何か、妙に神谷さんイラついてんなぁ。」「しょうがないんだ。相手が掛北だから。」「久保さん？」まだ、もぞもぞと着替えの途中な久保の応えに、田仲は振り向いた。「知らないのか？　神谷と掛北の主将斉木さんは中学が同じ、同じチームの先輩後輩

2、だったんだよ。」「え…？」知らなかったと顔に書いてある田仲に、久保は微かに笑った。「さすがに学年が違うと噂とか聞かないものなのかな？」「噂…？」「歳が上ならともかく下の場合はってことなのかな？　大塚や赤堀なんかも知ってたのに。」ひとり呟いて久保は首を傾げた。静岡では聞かない者がいないぐらいだとも、嘘か誠か知らないが矢野が言っていた。「あの…。でも、何で、神谷さんは…。」「神谷はあの通り、いろんな意味で頑固で飛び抜けていたから、凄く目立つ選手…というか目立つ人間だったんだな。神谷自身、感じたこと思ったことを黙って抱え込むようなタイプじゃないから、当然のように周囲と対立を

3、しがちになる。それが、チームワークを重視する斉木さんのやり方と真っ向から対立するようになって…ふたりは決別することを選んだんだ。」ようやくユニフォームを着た久保の準備作業は、今度は足もとにかかる。スパイクの紐を操りながら、久保は田仲に背を向けたまま続けた。「神谷は中学の部活を辞めてクラブチームに入った。俺と神谷はそこで出会ったんだ。」久保の顔に笑みが浮かんでいたが、背中しか見えない田仲は当然気づかない。「…惹きつけられた。っていうのかな？　俺はいつの間にかあいつのプレーに引き込まれていった。そして神谷と一緒にボールを蹴っているうちに、俺の夢も、いや野心が一気に具体的に

4、なった。」「野心。」「それぞれの個性を十分に引き出すことのできる、自由なサッカー。」久保は、田仲を振り返った。「…今の掛高が目指しているものは、それだ。」何の施設も設備もない、見通しだって決して明るいものではないし、むしろ高校三年間を無駄にしてしまう可能性のほうが高かった。それでも、神谷が一緒に来てくれるのなら、可能だと本気で思った。今もそれは正しかったと思っている。「神谷の本当の才能は、今お前たちに見えてるものが全てじゃないんだ。もしかしたらほんの一部に過ぎないかもしれない。」「…え？」「考えてもみなよ、トシ。自由なサッカーって言ったって11人が全員好き勝手やってた

5、らゲームにならないだろう？」「はぁ。」「それぞれの個性を全て把握して、それを引き出すことのできる才能が必要不可欠なんだよ。いや、引き出されたそれを十二分に使える頭脳、つまり司令塔がね。」「神谷さんには…それがあるということですか？」久保はそれには答えなかった。「神谷のサッカーはとても自由だよ。…ときどき妬ましくなるほどにね。」「久保さん？」立ち上がった久保につられて田仲も立ち上がる。「俺は、神谷を手放したくなかった。結構卑怯な計算もして神谷を誘おうって思ってた。結局、神谷を前にしたら全部すっ飛んでっちゃったけどね。」久保はドアを開けて、横をチラリと見て、一瞬動きを止め

6、た。「じゃあ、何て言って誘ったんですか？」背後からの田仲の質問に、久保は半開きの扉の向こうに問い掛けた。「お前、サッカー好きか？」田仲が反応する前に、廊下から答えがきた。「ああ…、それだけなら誰にも負けねえ。」久保が出て行った扉から、慌てて田仲も追って出る。「待っててくれたんだ。」「お前が遅すぎるんだ。呼んで来いって大塚にど突かれたんだよ。」「はは、ごめん。」神谷の肩に片手を乗せて、久保が笑う。「ホレ、行くぞ。」久保を促す神谷の指の先から、屋外の光が差し込んできていた。その先にはピッチが待っているはずだ。それを追う田仲を、神谷が振り向く。「お前は、サッカー好きか？」久

7、保も変わらぬ姿勢のまま振り向いている。「はいッ！」田仲の元気な返事に、久保も神谷も、笑った。ただいま久保は、全国大会に備えた練習メニューに頭を捻っている。「最近、急に田仲君が調子崩してるみたいだけど、心当たりある？」「あっりま～す。」赤堀の質問に答えたのは、馬堀。片手を上げて発言許可を求めている。「どうぞ。」「どうせ、一美絡みだろ。」しかし、馬堀が口を開く前に久保が突っ込んできた。「キャプテン～～。」「トシに言っといてよね。このままなら、本当にスタメンはおろかレギュラーだって降ろすからって。」自分はサボるくせに厳しい主将様である。「了解しました。」幹