足球风云日文同人文ツヴァイ外伝preliminary

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1、───ねぇ、君、もしかして日本人？ベンチでおとなしく座っている馬堀圭吾は、珍しく興奮して立ち上がりピッチへ激を飛ばしているキャプテン様の背中を見る。ああ。と馬堀は自分の口元が笑みに歪んでいるのを自覚しつつ軽く息を吐いた。思えば、あの出来事がすべての原因だったのだ。自分がここに、掛川サッカーの只中に喜んで放り込まれている、そもそもの元凶。夏。インターハイ。地方予選静岡大会。「肝冷えましたよ、久保さん。」決勝トーナメントにまで軽々と駒を進めた掛川高校サッカー部だったが、いくつかの不安要素を抱えていた。「掛川が、

2、こんな風に変わっていたなんて。?ひとつは、周知の事実でもあるキャプテン様。もうひとつはエースストライカーの不在。エースというのであれば、主将で10番の久保嘉晴であるが、彼は中盤にしてチームの要にして司令塔であって、ストライカーではない。得点力もチームいや静岡随一であるが。更には、ほとんど試合に出てこないキャプテンの代わりを務めることの多い中盤センターを主なポジションとする馬堀の怪我だった。決定力に欠け中盤の支配力も低下の甚だしいチームがここまで勝ちあがれたのは、地力の高さもさることながら───。「そう？」久

3、保が控え室までやってきた清水学苑のエース芹沢のゲーム後半にやっと出てきてあっさり流れを自チームに引き戻した掛川の主将（要するに自分）への挨拶にのほほんと応えているのを、周囲は何故か額を押さえつつ見守っている。「去年のままなら勝てたのに。?芹沢の言うことは間違いではない。掛川の部員だって同じことを考えた。もし、去年のままだったら、明らかにパワーアップしたこの芹沢のいる清水学苑には勝てなかっただろう。それほどの成長を遂げていたのだ。この長身の静岡のフリットさんは。「…文句があるなら、芹沢のところの元主将に言うん

4、だね。?言われて、芹沢は周囲と同じように、だが多分違う意味で額を押さえた。「恐すぎて言えませんよ、んなこと。」第一、普段から殊掛川のことを話題に出すと機嫌が急降下するのだから。たまに母校のサッカー部に後輩の様子を見に顔を出す元主将様のご尊顔を思い浮かべる芹沢はうめいた。「…でも、感謝してるよ。内海さんには、本当に。」「久保さん…？」曖昧な笑みを浮かべている久保を訝しげに見下ろす芹沢に、応えはこなかった。「ところで、芹沢さんよ。?低い声は白石だ。「お前ントコのあの一年差し出せや。?その言葉で思い出されたもう一

5、方の当事者は、注目され肩をすくめた。「…すまん、馬堀。大丈夫か？」表情を曇らせた芹沢に謝られて、馬堀は白い歯を見せて笑った。「普通の怪我だってさ。今後のサッカーに響くことはないって。」「でも…。」「ま、なっちゃったもんはしかたないっしょ？　ただ、山根？　だっけ？　伝えておいてよ。?右足ふくらはぎのあたりを包帯で覆っている。馬堀は、故意か事故か、清水学苑の一年生と接触して出血するような怪我を負い、久保と交替したのだ。彼は、いやに綺麗な笑みを浮かべてから、真顔になった。「二度目はないから。?芹沢は息を飲み、それ

6、から、ニッと笑った。「骨の髄まで叩き込んでおく。?「信用しとくぜ？?チームメイトを傷付けられた怒りを、当事者が穏やかに治めるように導いたのを彼も理解しているのだろう。剣呑な眼差しはそのままに白石は控え室を出て行く芹沢の背に言葉を投げた。実際芹沢がゲームの最中にもかかわらずあの接触の直後、馬堀を倒した後輩を怒鳴りつけていたのを見ていなかったらこんな言葉も出なかっただろう。「ああ。お互い、ユースでは気持ちよくプレイしたいしな。」と、出て行きかけて振り向いた。「ところで、田仲って何でいないんです？?その背に向かっ

7、てといより要するに控え室の出入り口に徐々に近づくけたたましい足音。に芹沢が振り向いたときには、時既に遅し。彼の顔面を踏みつけて、鼻息荒く登場した掛川の女子マネージャー遠藤一美は一枚の葉書大の封書、エアメイルを振り回した。「大変ですゥ～！！　久保さん！！」それは、スペインへの武者修行（？）に送り出した掛川のエースストライカー田仲俊彦からの近況報告だった。「本当に内海さんには感謝してもしきれないよな。?思わずとばかりに出た大塚の言葉を相方の赤堀もとがめるようなことはしない。同意見でもあったし、何より主将はこの場

8、にいなかったので。決勝トーナメント二回戦を勝利した掛川高校はそれでも厳しい練習を続けていた。主将は本日お休み。副将の赤堀、及び三年幹部連中が中心になって練習をしている。「馬堀にもね。?それには肩をすくめる大塚だった。「まったく、主将様には困ったもんよねェ～？」「矢野。」一年の面倒を見ていてグラウンドをチョロチョロしていた彼もいつのまにか加わっている。「今日も、例のお休みなわけね～。」ふと見れば、練習は自主休憩にな