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时间:2018-01-14
《日语文学作品赏析《薬》》由会员上传分享,免费在线阅读,更多相关内容在教育资源-天天文库。
1、日语文学作品赏析《薬》一、あかあいがめ亮るい月は日の出前に落ちて、寝静まった街の上に藍甕のような空が残った。かろうせんとうさん華老栓はひょっくり起き上ってマッチを擦り、油じんだ燈盞に火をふたま移した。青白い光は茶館の中の二間に満ちた。「お父さん、これから行って下さるんだね」せきと年寄った女の声がした。そのとき裏の小部屋の中で咳嗽の声がした。「うむ」うわぎぼたんは老栓は応えて上衣の釦を嵌めながら手を伸ばし「お前、あれをお出しな」かたいまつつみ華大媽は枕の下をさぐって一包の銀貨を取出し、老栓に手渡すと、老ふるかくしきもの栓はガタ
2、ガタ顫えて衣套の中に収め、著物の上からそっと撫でおろしてちょうちんみた。そこで彼は提灯に火を移し、燈盞を吹き消して裏部屋の方へ行っむせた。部屋の中には苦しそうな噴び声が絶えまなく続いていたが、老栓はそのひびき響のおさまるのを待って、静かに口をひらいた。しょうせんあんばい「小栓、お前は起きないでいい。店はお母さんがいい按排にする」「…………」せがれねむ老栓は倅が落著いて睡っているものと察し、ようやく安心してかどぐち門口を出た。はいじろみち街なかは黒く沈まり返って何一つない。ただ一条の灰白の路がぼんやあとりと見えて、提灯の光は彼
3、の二つの脚をてらし、左右の膝が前になり後にないぬありして行く。ときどき多くの狗に遇ったが吠えついて来るものもない。天気は室内よりもよほど冷やかで老栓は爽快に感じた。何だか今日は子供の昔に還じんづうって、神通を得て人の命の本体を掴みにゆくような気がして、歩いているうちにも馬鹿に気高くなってしまった。行けば行くほど路がハッキリして来た。行けば行くほど空が亮るくなって来た。老栓はひたすら歩みを続けているうちにたちまち物に驚かされた。そこは一ていじがい条の丁字街がありありと眼前に横たわっていたのだ。彼はちょっとあと戻もたりしてある店
4、の軒下に入った。閉め切ってある門に靠れて立っていると、身体が少しひやりとした。「ふん、親爺」「元気だね……」びっくりみは老栓は喫驚して眼を□った時、すぐ鼻の先きを通って行く者があった。うちその中の一人は振向いて彼を見た。かたちははなはだハッキリしないが、永たべものつかく物に餓えた人が食物を見つけたように、攫み掛って来そうな光がその人の眼から出た。老栓は提灯を覗いて見るともう火が消えていた。念のため衣かしら套をおさえてみると塊りはまだそこにあった。老栓は頭を挙げて両側を見た。気味の悪い人間が幾つも立っていた。三つ二つ、三つ二つ
5、と鬼のような者すがそこらじゅうにうろついていた。じっと瞳を据えてもう一度見ると別に何の不思議もなかった。まもなく幾人か兵隊が来た。向うの方にいる時から、著物の前と後ろに白い円い物が見えた。遠くでもハッキリ見えたが、近寄って来ると、その白い円いはっぴあんこうしょくものは法被の上の染め抜きで、暗紅色のふちぬいの中にあることを知った。一時足音がざくざくして、兵隊は一大群衆に囲まれつつたちまち眼の前を過ぎ去った。あすこの三つ二つ、三つ二つは今しも大きな塊りとなってうしお潮のように前に押寄せ、丁字街の口もとまで行くと、突然立ち停まって
6、半むらが円状に簇った。老栓は注意して見ると、一群の人は鴨の群れのように、あとから、あとからくび頸を延ばして、さながら無形の手が彼等の頭を引張っているようでもあった。暫時静かであった。ふと何か、音がしたようでもあった。すると彼等はたちまち騒ぎ出してがやがやと老栓の立っている処まで散らばった。老栓はあぶなく突き飛ばされそうになった。「さあ、銭と品物の引換えだ」ぬきみ身体じゅう真黒な人が老栓の前に突立って、その二つの眼玉から抜剣のような鋭い光を浴びせかけた時、老栓はいつもの半分ほどに縮こまった。まんじゅうつまその人は老栓の方に大き
7、な手をひろげ、片ッぽの手に赤い饅頭を撮んでいたが、赤い汁は饅頭の上からぼたぼた落ちていた。老栓は慌てて銀貨を突き出しガタガタ顫えていると、その人はじれったがって「なぜ受取らんか、こわいことがあるもんか」と怒鳴った。ちゅうちょほろ老栓はなおも躊躇していると、黒い人は提灯を引ッたくって幌を下ひっつかげ、その中へ饅頭を詰めて老栓の手に渡し、同時に銀貨を引掴んでおいぼれ「この老耄め」と口の中でぼやきながら立去った。「お前さん、それで誰の病気をなおすんだね」と老栓は誰かにきかれたようであったが、返辞もしなかった。彼の精神は、パオじっせ
8、たんでんひとりご今はただ一つの包(饅頭)の上に集って、さながら十世単伝の一人子いだパオを抱いているようなものであった。彼は今この包の中の新しい生命を彼のえ家に移し植えて、多くの幸福を収め獲たいのであった。太陽も出て来た。彼のだいどうめのまえには一条の大道が現われて、まっすぐに彼の家まで続い
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