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1、島根大学教育学部紀要第44巻別冊65頁～71頁平成23年２月65言語コミュニケーションと日本古典文学史教育＊福田景道AkimichiFUKUDACommunicationandJapaneseClassicsLiteraryHistoryEducation要旨教員養成学部の｢言語コミュニケーション｣を中核とする専攻の中で｢日本古典文学史｣の授業を実施する場合,｢言語｣や｢コミュニケーション｣と乖離する傾向がある｡また,近年,｢日本古典文学史｣授業の成績が著しく下降して,不合格者が多出している｡日本古典文学教育を
2、めぐって起こっている,この二つのまったく異質な課題に対処する方法として,｢コミュニケーション｣の多層性の活用があげられる｡授業内容のコミュニケーション的要素と授業方法におけるコミュニケーション活用とが一体となって二つの課題を解決に導くと考えられるのである｡実際の授業と試験による成績評価の実績と授業改善の経緯とその成否に基づいて上の仮説を提示するに至った｡【キーワード：日本古典文学,文学史,教育,教員養成,コミュニケーション,物語】鑑賞の能力を主に育成するＢ系列とに大別でき,その上１はじめにで両系列の融合型授業も
3、開設されている｡国文学史の古典領域に対応する授業は｢日本文学史Ⅰ｣で,Ａ系列中学校・高等学校の｢国語｣の教員免許状取得に必要の最初に位置し,すべての日本古典文学関係授業の基礎・な｢教科に関する科目｣は,国語学・国文学・漢文学・前提になるものである｡平成16年度の改革に基づいて,書道(中学のみ)からなり,国文学については特に｢国教科内容学科目としての位置づけ,教員養成学部の授業文学史を含む｣という条件が付加されている｡この国文科目であることの明瞭化などの改良や調整は行われたが,学史の中の古典文学領域を扱う授業につ
4、いて実施に際し根幹は旧来的伝統的な授業科目であり続けている｡同様ての問題点とその解決のために実行した授業内容改善とに,そこから分岐するＡ・Ｂ２系列の体系も維持されてその効果・結果を報告し,今後の可能性を展望したい｡いる｡それは,教員免許状取得要件や教科書教材などの実例として呈示する授業は,島根大学教育学部におけ教育的環境の不変性と無関係ではない｡るものであるため,教員養成学部の特性に対応ものになこれを,平成23年度施行予定の中学校新学習指導要領る｡平成16年度以降の同学部は,教員養成と教師教育にの第１学年の部分
5、に対応させてみると,｢伝統的な言語特化する学校教育課程単一の専門学部として再出発した｡文化に関する事項｣の中の｢(ア)文語のきまりや訓読それ以降,平成21年度までに開講した国文学史を対象との仕方を知り,古文や漢文を音読して,古典特有のリズする授業を主に取り上げる｡また,学部改組に伴って,ムを味わいながら,古典の世界に触れること｡｣がＢ系中学・高校の国語の教員免許状に対応する専攻が,英語列に,｢(イ)古典には様々な種類の作品があることを知２の専攻と合流して｢言語コミュニケーション｣を中核とること｡｣がＡ系列に符合
6、する｡する新専攻が形成されたことも関係する｡第２学年になると,｢(ア)作品の特徴を生かして朗読この新体制において,日本古典文学教育とコミュニケーするなどして,古典の世界を楽しむこと｡｣｢(イ)古典ション教育との間に性格上の不整合が生じたのである｡に表れたものの見方や考え方に触れ,登場人物や作者のまた,同時に,教育効果(受講者の授業内容理解)に関思いなどを想像すること｡｣に進み,Ｂ系列に傾斜し,する障害が顕在化するようになった｡本稿では,その両さらに第３学年の｢(ア)歴史的背景などに注意して古者に統合的に対処する
7、方途と可能性について論究する｡典を読み,その世界に親しむこと｡｣｢(イ)古典の一節を引用するなどして,古典に関する簡単な文章を書くこ１言語教育専攻と古典文学教育の関係と｡｣になるとＡとＢを融合して発展と応用が求められている｡その中にあって,平成14年施行の旧学習指導要国語教育関係の授業は,講義形式と演習形式とに分類領に明記されていた｢文学作品などの成立年代やとの特できるのが通例であろう｡ここで対象とする島根大学教徴などに触れる場合には,通史的に扱うことはしないこ３育学部の日本古典文学の授業も例外ではなく,講義形
8、式と｣という制限が,新学習指導要領では消滅している４によって知識の取得と考察力の養成とを目的とするＡ系ことが注目される｡これは現行の教員免許法の科目列と,演習形式によって古典文学の本文の読解力と評価・｢国文学｣に｢国文学史を含む｡｣という要件が付されて＊島根大学教育学部言語文化教育講座66言語コミュニケーションと日本古典文学史教育いることと,ある意味で整合するようになったとも言えが最も
