パーテイーの主役

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1、555パーテイーの主役(しゅやく)「もう入(はい)って良(よ)いかな」「良(よ)いよ」返事(へんじ)を聞(き)いてゆかりが部屋(へや)に入(はい)ると、夫(おっと)がテーブルの向(む)こうに立(た)ってゆかりを迎(むか)えた。「誕生日おめでとう」「ありがとう」ゆかりがそう言って料理の並べられたテーブルに近付(ちかづ)こうとした瞬間(しゅんかん)、すぐそばでクラッカーの音(おと)が二発響(にはつひび)いた。「お誕生日おめでとう」「お母さん、おめでとう」「まあ、あなたたち。そんなところに隠(かく)れてたの」ゆかりのすぐそばでクラッカーを

2、鳴(な)らしたのは、小学四年(しょうがくよねん)と二年(にねん)の子供(こども)たちだった。「お母さんの席はこっちだよ」「今日のお母さんはお客さんなんだから何にもしなくて良いんだからね」子供たちはそう言ってゆかりの両腕(りょううで)を取(と)ると、ゆかりを強引(ごういん)に夫(おっと)の隣(となり)の席(せき)に座(すわ)らせた。テーブルの上(うえ)には料理(りょうり)やら花(はな)やらたくさん並(なら)べられていて、なんだか披露宴(ひろうえん)の席(せき)にいるみたいだった。ゆかりがそんなことを思(おも)って自分(じぶん)の格好(

3、かっこう)を気(き)にしていたら、夫(おっと)と子供(こども)たちがもう一度声(いちどこえ)を合(あ)わせて言(い)った。「お母さん、お誕生日おめでとう」「ありがとう」ゆかりは答(こた)えながら思(おも)わず声(こえ)がうわずってしまった。もちろん、披露宴(ひろうえん)とは比(くら)べようもないささやかなパーティーだったが、夫(おっと)や子供(こども)たちの気持(きも)ちがうれしかった。壁(かべ)に画鋲(がびょう)の穴(あな)が増(ふ)えてしまうことも、料理(りょうり)がよく見(み)るとおつまみや子供たちの好物(こうぶつ)に偏(かた

4、よ)っていることも関係(かんけい)なかった。「お母さん、泣(な)いてるの」「もしかして、うれし泣(な)き」「ほら、お母さんをからかうんじゃない。みんなが席に着いたところで乾杯しよう」夫(おっと)が子供(こども)たちを黙(だま)らせて、ゆかりにもコップを持たせた。それで、ゆかりはそれ以上子供たちに追及(ついきゅう)されることなく、今度は家族全員で誕生日を祝(いわ)った。「みんな、ありがとう」「何言ってるんだ。まだパーティーは始まったばかりじゃないか」「そうよ。これからが本番(ほんばん)なんだから」小学四年(しょうがくよねん)の娘(むす

5、め)がゆかりをとがめるように言(い)って、弟(おとうと)に合図(あいず)した。「お母さん、これプレゼント」「ありがとう。今年(ことし)は何(なに)かしら」ゆかりが中身(なかみ)を取(と)り出(だ)すと、ビール瓶(びん)の王冠(おうかん)で作(つく)ったイヤリングだった。「イヤリングね。良(よ)くできてるじゃない」「うん。去年(きょねん)はプルタップで作(つく)ったネックレスだったから、今年はイヤリングにしてみたんだ。洗濯ばさみで付けられるように工夫(くふう)したんだよ」得意(とくい)そうに言(い)う息子(むすこ)を前(まえ)に、ゆか

6、りは洗濯(せんたく)ばさみが飾(かざ)りでないことを知(し)った。プルタップで作ったネックレスではけがをしてしまいそうになったが、洗濯(せんたく)ばさみで付(つ)けるイヤリングもなかなかすごそうだった。「早(はや)く付(つ)けてよ」「そうね」ゆかりは息子(むすこ)にせがまれてなんとかイヤリングを付(つ)けた。5ゆかりがイヤリングを付(つ)けたら、今度(こんど)は娘(むすめ)が待(ま)ちきれないように言(い)った。「次(つぎ)は私(わたし)の番(つがい)ね」娘(むすめ)はゆかりにプレゼントを渡(わた)しながら、早(はや)く見(み)ても

7、らいたい様子(ようす)だった。「あなたのプレゼントは何(なに)」「私(わたし)は今年(ことし)もぬいぐるみにしたの。去年(きょねん)はちょっと失敗(しっぱい)しちゃったけど、今年(ことし)は結構良(けっこうよ)くできたんだよ」ゆかりが娘(むすめ)にせかされるように袋(ふくろ)を開(あ)けると、犬(いぬ)か猫(ねこ)か熊(くま)らしい格好(かっこう)をしたぬいぐるみが出(で)てきた。右目(みぎめ)と左腕(さわん)が取(と)れ掛(か)かっている上(うえ)パンヤも少(すこ)しはみ出(だ)していてなかなかスプラッタなぬいぐるみだったが、去年

8、(きょねん)は正体不明(しょうたいふめい)なぬいぐるみだったのだから大変(たいへん)な進歩(しんぽ)だった。「ありがとう。大切(たいせつ)に飾(かざ)っておくからね」ゆかりは娘(むすめ)に言(い)って、去年(きょねん)のように針(はり