秋の夜がたり

秋の夜がたり

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时间:2019-05-24

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1、秋の夜がたり岡本かの子中年のおとうさんと、おかあさんと、二十歳前後のむすこと、むすめの旅でありました。旅が、旅程の丁度半分程の処で宿をとつたのですがその国の都と、いなかしずか都から百五十里も離れた田舎との中間の或る湖畔の街の静なホテルです。その国と云ひましたが、さあ、日本か、外国か、今か、昔かと、そきれを作者はどう極めませう。実は、日本でも外国でも、今でも昔でもかま関はないのです。この物語の真実や、真味は、さういふことに一向かまはないで作者の意図に登り、そして読者に語られようとしてゐまさしえへきがんす。だが挿画画家さんにお気の毒ですね。黒眼を描かうか碧眼をちぢれげすべ現はさうか縮毛か

2、延髪か描き分けよう術もありませんでせうから。ですから具体的な人物でなくとも、草か木か鳥獣か花かで、このよ物語の読後の気持を現はして下さつても宜いのです。といつて私がこれ以上くどく画家さんに指図をしなくてもそれはその道の技量敏感で、どうしてでも筋や真実真味のけはひを現はして下さるでせうから、私いは私の物語に遠慮なくは入らして頂きませう。はげ季節は秋です。夕方すこし烈しかつた風もすつかり落ちて、草木しずかのけはひが風にもまれなかつた前の静なたゝずまひに返り、月が、余り明る過ぎない程の明るさで宵の山の端にかかりました。ホテルの窓からはほんの湖水の一端しか見えませんが、その一端の澄み上つたさ

3、わやれいろう爽かさが広い全面の玲朗さを充分に想はせる効果をもつて四し人の健康な清麗な親子の瞳に沁み入りました。そして、今、給仕人がばんさん引下げて行つたばかりの晩餐の幾つもの皿には、その湖水でとれた新らしい香の高い魚類が料理されてあつたのです。それらの皿と入いちじくれ違ひに、附近の山でとれたといふ採りたての無花果の実が、はじそうようやおさつやけ相な熟した果肉を漸く圧へた皮のいろも艶やかに、大きな鉢に入れられて濃いこうばしいお茶と一緒に運ばれました。――おとうさん。今夜こそ、わたし達は私達の真実のことを、この子供達にお話しいたしませうね。――ああ、それが好い。これがおとうさんの返事です

4、。――さうよ、おかあさん。もう四五年前からのお約束ですもの。おっしゃ――僕たちが二十位になつたら話してあげるつて仰つたことがありましたつけ。歳も二十と十九の一つ違ひのむすこと、むすめが言ひました。――まあ無花果をたくさん喰べてな、お茶もこうばしいぞ、月が半分も、あの山の端に傾いた頃から話し出さうよ。おとうさんが、きつぱりと云ひますと、先に云ひ出したおかあさんはずかあかがいそいそとしたなかにもすこし恥し相な赫らめた顔色を見せながました。わが母乍ら美くしい愛らしいと、むすめはそれを眺めました。いなかおとうさんもおかあさんも、今度一族が出発して来た田舎の人ではありませんでした。実は今夜一晩

5、保養の為に優勝の地として名高いこ此の湖畔で楽しいくつろぎをしてから更に明日出向いて行かうとする都の生れの人達なのでありました。そこ都でもと生れた人が百五十里もの遠い田舎の人となり、其処でむすことむすめを設け、土着の住民となつたからとてそれが別に大して珍らしいことでもむづかしいわけのものでもありません。けれど、このおとうさんと、おかあさんがさうなつた径路についてはそこにほかの人並とは違つた事情があつたのであります。た知る人ぞ知る。とでも云ひ度いところですが、さすがに百五十里はなれれば、そしてこのおとうさんやおかあさんのやうに自然すぎるほしまど落ついて土着して仕舞へば実際、あやしむ人はお

6、ろか、当のおとうほとんさんおかあさん自身でさへ殆ど自分達の前身は忘れはてたやうないなかものでした。おそらく田舎暮らし何年間を他人事のやうに昔を思ひ隔てて仕舞つて居たにちがひありません。昔四十何年か前に、おとうさんとおかあさんは非常に仲好しの女友達同志を母親として都の一隅の街に生れました。二人の母親はまたあいにくそろ生憎揃ひも揃つて二人をお腹に持つて居た頃に未亡人になりまていねんした。丁度国の大戦の為にその国の丁年以上の男子が大方戦線へまじ出たその兵士の仲に当然交つて行つて仕舞ひ、その上間もなく二人の夫が二人とも戦死したからでありました。未亡人同志は、いよいよ仲好しになり、頼み合ひ、は

7、げまし合ひ、何事も二人の合議で生活して行くやうになつたのです。その合議のなかの一つの事件として不思議なことが取り行はれたのでした。おとうさんを生んだ母親は男のおとうさんを女に仕立て、おかあさんを生んだ母親は女のおかあさんを男育てに育てたのでした。よくたとへには、玉のやうな赤ん坊を生んだなどと云ひますが、ほんたうは生れたばかりの赤ん坊といふものは、赤くてくしや/\で女だちょっとか男だか一寸区別がつきかねるものです。前後して生んだ赤ん坊を真実の男とか女とか知つ

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