被疑者取调意义根拠可视化是非

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1、被疑者取調べの意義・根拠と可視化の是非金沢大学教授・弁護士中山博善はじめに第1被疑者取調べの意義と弊害1刑事訴訟法上意義2刑事政策上の意義3被疑者取調べの弊害4取調べ可視化論との関係第2被疑者取調べの根拠と許容限度1法198条1項本文と但し書きの関係2取調べ受忍義務否定論について3取調べ受忍義務の根拠4取調べ可視化論との関係第3取調べ可視化論1取調べ可視化肯定論について2取調べ可視化否定論について3取調べ可視化の是非はじめに平成21年に来たる裁判員制度の実施に向けて、取調べの可視化論が華やかである。しかしながら、その前提となるべき取調べの意義

2、と根拠について、特に取調べ可視化肯定論者の立場が明確でないうえ、両論者とも被疑者の取調べの意義と弊害の一面のみを見てそれぞれの立場を主張し、そのため議論が噛み合わないまま推移しているように思われる。そこで、本稿においては、先ず、刑事訴訟法(以下「法」ともいう)上の被疑者取調べの意義について、弁解聴取に止まるものか、その供述の矛盾確認を旨とするものか、あるいは、自白を求めることを本旨とするものかについて分析検討し、併せて被疑者取調べの刑事政策的意義についても触れたうえ、その影というべき被疑者取調べに伴う弊害について検討し、可視化論との関連を明ら

3、かにしたい。次に、被疑者取調べの法的根拠と許容限度について検討したうえ、これが取調べ可視化論とどのように関わることになるのかを明確に1したい。そして、以上の検討を踏まえ、被疑者取調べ可視化の是非に関する肯定・否定両論の根拠を検討したうえ、当職自身は、非公開の場における被疑者の取調べの意義を積極的に肯定する立場に立って、取調べの可視化により取調べの意義が少なからず低下することを認めつつも、現状においては取調べの可視化を肯定せざるを得ない所以を述べたいと思う。なお、本稿でいう取調べの可視化とは、被疑者取調べの全過程を録音ないし録画をすることである

4、。被疑者取調べの過程を客観的に明らかにする必要性そのものは、法務検察関係者を初めとする可視化否定論者も認めているところであるが、その方策としては、現在のところ、取調べの都度、書面による記録を義務付けるに止まっている。第1被疑者取調べの意義と弊害本項においては、刑事訴訟法上及び刑事政策上の被疑者取調べの意義を検討し、これに伴う弊害について述べたうえ、取調べ可視化論との関係を明らかにする。1刑事訴訟法上の意義被疑者取調べの刑事訴訟法上の意義が、証拠収集の一環として被疑者の供述を得るための捜査方法であることまでは争いのないところである。しかしながら

5、、捜査方法としての被害者取調べ自体の意義については諸説様々であって、大きく分けると、被疑者の弁解・主張を聞く手続を本旨とするもの(以下「弁解聴取型取調べ」という-注1)、被疑者の供述自体の矛盾やその供述と他の証拠との矛盾を確認することを本旨とするもの(以下「矛盾確認型取調べ」という-注2)、捜査官の知らない真相を自白させることを本旨とするもの(以下「自白追求型取調べ」という-注3)の三類型になる2と思われる。もとより、矛盾確認型取調べを本旨とする見解は、弁解聴取型取調べを包含し、自白追求型取調べを本旨とする見解は、他の二類型の取調べを包含する

6、ものである。以下、各取調べ類型の意味内容と、法の予定している取調べがいずれの類型に該当するかについて検討する。(1)弁解聴取型取調べこれは、いわゆる訴訟法的捜査観あるいは弾劾的捜査観を純粋に貫く論者から主張されているものである。その論者からすれば、被疑者は捜査手続き上も当事者であって、取調べの対象ではないから、被疑者の取調べは、捜査機関が被疑者の弁解・主張を聞くべき手続であって、むしろ被疑者の権利として位置づけられる。しかしながら、被疑者の取調べをこの類型に限定するのは、少なくとも現行法の解釈としては取り得ないし、捜査方法としての被疑者の取調

7、べの意義を放棄するに等しいものであって、法がその目的とする事案の真相解明を被疑者の権利擁護の名の下にないがしろにするものである。即ち、現行法上、論者の言う弁解聴取型取調べは、捜査機関による弁解録取手続として規定されているが(法第203ないし205条)、これとは別個に捜査方法としての取調べが規定され(法第198条)、その取調べの成果として、被疑者の弁解・主張ばかりではなく、自白を含む不利益な事実の承認を内容とする供述録取書の作成が予定されているところから見ても(法第322条1項)、法が被疑者の取調べを弁解聴取型に限定していないことは明らかである

8、。なお、立法論として、被疑者の取調べを放棄することを指向するにしても、そのためには、これに代わる証拠収集手続を備え、主観的要件の立証を容易にする刑事実体法を整備する

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