南 博 - 日本人の心理 (1974)

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1、はしがきけれど、また、第三者として、外からながめるために、われわれの気づかないところを、いい感想が目立ってきた。どっちも困ったことである。戦争がおわると、逆に、日本人を、三等国民、四等民族におとして、自虐的な劣等感にみちた内輪ぼめ、うぬぼれが多く、自分のあばたもえくぼに見える、自画自讃が多かった。そうして、る。ている。日本人自身によって書かれたものもあり、外国人の目にうつった日本人の描写もあととがむずかしい。育ち、生きているために、日本人の持ち前のよさについても、わるいところについても、知るそれにくらべ

2、ると、外国人の書いたものは、およそ見当外れで、吹き出すような誤解も多い日本人の手によるものは、むかし、日本民族が優秀であることを-証明するために書かれた、今日まで、日本人の国民性とか、民族性とよばれて、いろいろな研究や観察が発表されてき魚は水中にいて水を知らないといわれる。おれわれ日本人は、日本で生れ、日本人のなかでtましがきz本人の心理的伝統とでもよベる、いくつかの流れをたどれると思うからである。とくに、いると思われる、むかしの人たちの心理にまで、さかのぼってみたばあいもある。それは、代の材料からあつ

3、めて、証拠立てようとした。ばあいによっては、現代人の心理の源になってげてみた。考え方と、その表現の仕方について、日本人に独得だと思われる点を、大まかに、いくつかあもまず、今日でも、われわれの大多数が、多少とも、心のどこかにもっている、ものの感じ方、も、そのために、無理な解釈が出てくるし、一般論におちいりやすいので、一つの仮定や仮説にあてはめてものを見たがる。全体として、理論のすじは通るけれどしかし『菊と刀』にも見られるように、とかく、科学的な研究という立場は、理論が先に立つもとやついた報告が出るようにな

4、った。ルース・ベネディクトの『菊と万』はその一例である。大部分に共通な心理とか性格についての研究法がすすんできたから、めんみつな調査と観察にとばの不自由さから、日本人の心理を、自分のものとして感じとるのは、むずかしい。あてていることも多い。しかし、外国人のばあいには、なんといっても、環境のちがいと、そうして、この本では、日本人の心理について、一般的な仮説や理論を立てようとはしない。それよりもっとも、近ごろは、社会心理学や社会人類学の方面で、一つの社会集団に属する人たちのそれらの心理的な特徴を、はっきりと

5、裏書きするような記録を、できるだけ、現D日.，....本日、ーー11はしがき進歩の側でも、まだまだ、日本人の心理的な伝統からくる悪い面が、整理しきれずに残されて心がまえをもっ必要がある。人聞が政治のギセイになっては困る。反動の側はいうにおよばず、の社会についても、日本の人間についても、冷静に、客観的にみることをしなければならない。ている。日本が、国の独立をおかされ、国民の自主が失われていくときに、われわれは、日本読者は、著者の考えと、材料をつきあわせて、みずからの判断をとっていただきたい。ない。むしろ材

6、料をあつめて、読者といっしょにこの問題について考える用意をしようとする。あげたような心理が生れてくるいきさつを考えてみようとした。人同士のつきあいや上下の関係、つまり人間関係の特徴を見渡して、その人間関係から、上にの法則性についての考え方、同精神と肉体に関する態度の四つをとりあげ、おわりに、同日本る。他の国にくらべると、くずされずに、今日のわれわ九に受けつがれている部分が大きいのであは、地理的にも、歴史的にも、とざされた島のなかに生長してきた国だから、心理の伝統も、急を要する政治の問題を解決するためにも

7、、われわれは、ひとりひとりの人聞を大切にする今日、われわれ日本人は、日本の歴史はじまって以来、もっとも大きな危機のなかにおかれこの本は、日本人の心理について、一般論をやらないし、きれいな図式で説明することもしそのような流れのなかで、パ門日本人の自我意識、同幸福と不幸の心理的な体験、同ものごとIII代さんに、あらためて感謝の意を表する。岩波書庄の海老原光義君、中島義勝君、資料、原稿の整理に当られた原口セツ子さん、内山靖の役に立てたいと思って書いたのである。されている口いやなもの、わるいものは、早く見つけ出

8、してなくしたほうがいい。少しでもそいる。おわりに、この本を仕上げるため、長いあいだぼくをはげまし、協力を惜しまれなかった、この本には、日本人のアラ探しが多いように見えるとしても、それは、反省の材料として出一九五三年十月南博IV目次一一t土21日654321日し死んで身につくものはなし九分は足らず十分はこぼれる本ひとのものは我がもの一寸の虫にも五分の魂すいた事してくらす障らぬ神にたたりなし滅私奉公長いものには巻かれよ::::本i:/:'日人人