茶室と数奇屋大工

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1、茶室と数奇屋大工12631024呂　林静茶室と数奇屋大工　茶道の伝統が古いが如く茶室の歴史もまた古い。茶道の成立と茶室の成立とは、その期を一つにすると言っても言い過ぎではないだろう。　茶室は密度の高い空間である。茶室は建築その物の本然の問題をはらみ、事物的な要求をどのように建築的に解いたかを物語る教書だと思われてる。　茶室は、「茶事」を営むための施設である。茶事とは、濃茶、薄茶、懐石を含んだ、客をもてなす遊びであり、客と亭主が「一期一会」の喜びに浸る遊びである。茶室は、そうした茶事に適応する機能を備えていなければならない。言いかえれば、客や亭主の所作、動きに支障をいじないことが必要である

2、。ですから、使い勝手ということが茶室にとしては重要な条件だと思われている。　茶室のただずまいは、昔から「山居之体」を理想として存在し続いてる。それは俗塵を避けて山中に侘びずまいするのような、草庵の主体なって客をもてなすことが、茶の湯の前提となっていたからだと思われている。従ってその建築は、格式とか威厳性という要素を一切放棄して、謙譲で「しほらしき」表現を求めたのだ。差石で壁をおろした足元、軽やかな屋根、途中で屋根を切断して木口をあらわしたようなばら軒の手法、また雨戸を切り縮めた仕様のにじりぐちの板戸などは、侘びすます心の現われである。　昔から茶匠たちは、みずから茶室を建て、露地を工夫し、

3、道具を好み、それらを取り合わせて各自の茶境を創造してきた。たとえば、利休である。　今ここに現代建築の立場で利休の茶室をとりあげると考えられている。利休の茶室、これは日本の茶室と云ひ代へてもあまり変ったことにはならないだと考えられている。それはほど利休の名は茶の湯に関するに限り大きな在り方である。利休の茶室は日本の数寄屋造りの起りであり、またその到り着きであり、そしてまたは数寄屋造りの盛りの時期だと思われている。千利休は今日にとしては単なる茶人ではないだと考えられている。彼は三百五十年前の文人であり、創意い満ちた知識人である。茶の湯といえば、生活構成の芸術の中に独創的な工芸品や茶室や茶庭な

4、どを残した工芸家でもあり、建築家であると考えられている。利休の茶室は実際の今日にとしては単に茶室だけのものではなく、茶室以上の建築であると考えられている。彼の茶室は建築そのものの本然の問題をはらみ、事物的な要求をどうのように建築的に解いたかを教科書のような存在していると思われている。利休の茶室通して数寄屋造りをみえる。それは日本の数寄屋造りだと考えらている。数寄屋造りの意匠理念はいまも建築の設計理念として世界に生きてできると思われている。　茶の湯の理念に変わりはないが、その表現は個性的なもので、各自の創意工夫を競うところに、「数寄道」の妙味があっただろう。　数寄屋の大工たちは誰も落ち着い

5、た安定感がある茶室造るよう努める。ですから、そのために各部の寸法の決定には細心の配慮をした。優れた寸法を盗むために、目盛をした扇子を忍ばせて席入りしたという逸話がある程であろう。茶室の寸法には思想がこめられており、ただの寸法の配分に、作者の独自な思い入れが託されていることがあると思われている。　茶室はどれも同じように見えてしまうといわれる方がよくあろう。ただかな相違にも眼を凝らすことによって、個々の茶室の持味や、作者の意図が伝わってくるようになるものであろう。　でも、もともと茶室建築なるものは数寄屋大工の間にあっては口伝とか秘伝などがされてきたため、書籍としてひろく刊行されなかったばかり

6、であろう。ですから、これを資料としての収集などは非常に困難であろう。また時代の変わるとともに人々の心覚えの程度とか学問的体系とか造り方法などはほど遠いものだろう。　これ以上、私は茶室と数寄屋大工についての考えである。まだ研究不足だから、足りない部分がたくさんある。参考文献；１、茶室——設計図とその実際　　著者　千　宗室　村田治朗　北村伝兵衛２、京都茶室細見　　著者　　中村昌正３、利休の茶室　　著者　　堀口捨己　４、数寄屋建築造しゅう——室内構成　出版　叢文社５、宮大工棟梁·西岡常一「口伝」の重み　　　著者　　　西岡常一